カルテ6 年の瀬の電池切れ
イベントになるとやたら行動力を発揮する人、皆さんの周りにも一人や二人はいますよね。確かにそういう人は貴重な存在です。しかし、ちょっとした不注意から予期せぬ結果になってしまう場合も考えられます。
その年もあと数時間を残すばかりとなった大晦日、患者(片山さん 24歳 会社員)は年をまたいだ初詣へ出かけるべく、友人たちとの連絡に余念が無かった。
患者のスマホはその友人たちからのメールや電話のコールが鳴り続き、まるで休むことを知らないかのようであった。
外が闇に包まれた頃を見計らい街へと繰り出し、
(都内)某所の神社で大勢の人達と共に年越しのカウントダウン、
イモ洗いかのような人の流れの中で賽銭箱に五円玉を投げ入れ、
興奮冷めやらぬテンションのまま居酒屋で日が昇るまで友人たちと飲みあかす。
患者はお祭り好きな男であった。
予定通り友人達と合流した患者。
年末年始は終日営業となる電車に乗り、目的地へと向かう。
その最中であっても、他の友人から一足早い「あけましておめでとうメール」が次々と送られてくる。 一緒に年を越す友人達との会話を楽しみつつ、それらのメールにも手早く返信をしていく患者。
その時である、一通の異質なメールが舞い込んだ。
こんばんわー(〃∇〃)
今初詣する神社に向かっている真っ最中です!
片山(患者)さんは年越しどんな感じで過ごすんですか~?
それは、ここ数ヶ月の間やり取りをしているメル友からのモノであった。
『彼女も初詣かー』
その時は何気なくそう思っただけであった、その時は・・・。
やー( ´ー`)ノ
こっちも初詣行ってる途中だよー
○○明神とかスゲェ混みそうなうえに、
周りにいるのは野郎の友達ばっかだし(笑)
そっちは家族で初詣とかかな?
普通に状況説明メールを返信した患者。
しかし、次に彼女から送られてきたメールは、
患者のお祭り心を加速させるのに十分なパワーを秘めていた。
いえー、友達4人と一緒です♪
○○明神なんですか!?
私たちは●●天神ですよ~
なんか近いですね(*´∇`*)
「マジかー?!」
○○明神と●●天神といえばハシゴ初詣で有名なほど、超近距離に位置した初詣客御用達の二大神社である。
『これは飲み会へと持ち込むしかない!!』
新年早々の大きなイベントの予感、これはなんとしても成就させたい。
最高潮に達しつつあるテンションを抑えられないまま、今後の展開を必死に考える。
患者の頭の中では既に年を越したかのような気分であった。
はりここはストレートに 「初詣終わったら一緒に飲まない?」
という内容のメールを送ることにした患者。
露骨な文面にならないようにメールを打ち、送信ボタンを押す。
しかし、何かがオカシイ。
メールが正常に送信されないのだ。
既に時間は年が明けるまであと一時間を切っている。
そうなのである。
毎年恒例となったいわゆる“魔の時間帯”に差し掛かっていた。
初詣の連絡+新年の挨拶メールで著しく電波状況の悪くなるこの時間。
しかも、場所は初詣予定地周辺、今まさに参拝者の列に加わろうとしていた時であった。 そんな状況下でメールをスムーズに送信することなど到底無理な話である。
その事には薄々気付きつつも、メール送信を繰り返す患者。
やっとの思いで送信を終えたものの、今度は彼女からの返信が無い。
相手も同じような状況、当然である
しかし、そこで諦め切れない患者は『メールセンターの確認』を何度も行ってしまう。
これが後々取り返しのつかない事態を引き起こす原因となることも知らずに・・。
とうとう我慢の限界を超えた患者は、再度彼女にメールを送ろうと決心する。
その状況下ではかなり無謀な行為のように思えるが、患者自身に迷いは無い。
先ほどと同様にメールを作成し、送信ボタンを連打する。
その時である。
患者のスマホの画面が警告音と共にブラックアウト。
「うおー、充電があああぁぁぁ!!?」
あれほど連絡のために酷使した上に、電波状況の悪い中でメール再送とサーバー確認の連続。 力尽きて当然である。
彼女との連絡手段を完全に失った患者はガックリとうなだれる。
その後、抜け殻のようになった患者は友人達と朝まで飲み明かしたそうだ。
『些細な注意を怠ると取り返しのつかない事態に繋がる』という良い例。
確かに、行動力がある人は魅力的だし貴重な存在である。
しかし、細かい事柄にまで注意をはらう事ができていなければ、予想だにしなかった要因からそれまで思い描いていた構想が無に帰してしまう場合もある。
浮き足立つ気持ちも分からないではないが、自分の置かれるであろう状況を予測し、それを客観的に見ることが出来るようにもなりたいところだ。
これだけスマホが普及した今、
『充電・バッテリーが切れる=連絡手段が途絶える』
・・・となることは誰でも用意に想像がつくでしょう。
事前の連絡でかなり酷使したスマホをそのまま持ち出したこともそうですが、電波状況が悪い中で無理な送受信を繰り返したあなたはかなり不注意だったと言えるでしょう。 これでは『ポケットに残っていたチョコレートをいの一番に食べてしまい、後になって後悔する遭難者』のようなモノです。
あなたは若干ですが、状況を判断する能力に欠けているようです。
判断力を養うにあたって良さそうな書籍がありました。
処方しておきますので、除夜の鐘を聞きつつ服用してください。