カルテ8 また彼女にバレた
彼女以外の女性とのメール。そのメールに下心が有る無いにかかわらず、彼女はそれをどこからともなく察知してしまうようです。それが些細な変化からであっても・・・。 前回の中谷さんの処方を見る
患者(中谷さん 26歳 製薬会社勤務)には大学時代から付き合っている彼女がいる。
彼女は鋭い面もあるが、基本的には患者に対して寛容な態度で接してくれる。
そんな彼女との恋愛関係に不満はない、と言える。
しかし長い付き合いともなると、マンネリ気味になってくるのは仕方が無いことである。
最近、患者は彼女に内緒でとある女性とメールのやり取りをしている。
相手は取引先の会社で受付けをしている女性で、頻繁に顔を合わせているうちにちょっとした会話を交わすようになり、そのことがきっかけでメールアドレスを交換するに至った。
いつも親身に対応してくれるその女性とのメールは、患者にとって平凡な日常に刺激を与えてくれるちょっとしたスパイスのようなモノになりつつあった。
そんな一見平和かのように見えた患者の日常を揺るがす事態が発生する。
ある日、患者は彼女の様子が少しおかしいことに気付く。
いつもよりも態度がちょっとヨソヨソしいのである。
話しかけても若干含みのある返事がかえってくる。
ちょっと気マズイな、と思っていると患者の携帯がコールし着信があることを告げる。
『おっ、取引先の子からのメールか』
患者は彼女がいる前ではあるが平静を装い、男友達に対するのと同様にメールの内容を確認し返信を終える。
以前、自分の感情を表に出してしまい失敗している患者。
だが、今は何事もなかったように振舞えたのでなんら問題は無いように思えた。
しかし、その時である。
向かいに座って雑誌を読んでいた彼女が、患者のそんな心情を見抜いているかのようにこう言い放ったのである。
最近、その曲よく鳴ってるよね。着メロかえたの?
『ドキっ!』
突然発せられた何気ない彼女の一言は、強力な拳銃のごとく患者の精神を撃ち抜く。
何が原因かは分からないが、明らかに患者のメールを気にしているようである。
『今、おかしなことしたか・・・俺は?』
状況が飲み込めない患者は、動揺を隠しつつ彼女に言葉を返す。
ん、なんのこと・・・
語尾が裏返りそうになるのを抑え、あくまで平静を装う。
困ったら質問を質問で返す。
まさに典型的な焦りの行動パターンだ。
そうしながらも必死に考えを巡らせた患者の脳内である一つの要因が思い浮かぶ。
『やべ、着メロ設定がこんなトコで裏目にー!』
そうなのである。
患者はその女性からの着信音を通常とは別のモノに設定していたのだ。
どのように言い逃れようかと考えあぐねる患者。
その余裕を奪い去るかのように、彼女は次の言葉を投げかける。
なんのこと・・・じゃないって
ちょっともう一回聴いてみたいから私もメールしてみていい?
ゴメン、おまえからのメールじゃこの着メロ鳴らないんです・・・
「いや・・・、ほら、会社の上司からのメールを分かりやすいように変えてあるんだよ!」 と患者は必死に言い逃れる。
しかし、彼女は明らかに何かを察知しているように
「えー、それにしてはカワイイ着メロじゃなかった?」
と追求の姿勢を崩さない。
その後も、患者はあくまで「上司からのメールだ」と言い張り続け、なんとか彼女をなだめるに至った。
患者としては『上手くごまかせた』と思っているようだが、彼女としては疑いの念が晴れていないことは明らかであろう。
患者は自分の無頓着さを痛感したのであった。
以前、『女性はカンがいい』といいました。
それはこのような些細な事柄に対しても働くモノなのである。
あなた自身の感情に対してだけではなく、
周りにある物事のちょっとした変化にも反応を示す。
その事にまで気を配れなかったあなたの無頓着さが原因だ、と言えるだろう。
あなたは女性の直感というモノを全く把握できていないようです。
確かに、それを理屈だけで捉えきる事は難しいかもしれません。
しかし、相手の感覚に対して少しでも意識を払うことが出来れば、こちらの思いを察知される可能性も減らせるはずです。
女性の直感は常に働いている、という事を念頭に置いて行動するようにしましょう。